「家の補修工事とクーリングオフ、違約金の処理」(ラジオ放送)

1 本日のFM宝塚くらしの相談所のテーマは、訪問販売です。訪問販売というと、業者の人が自宅を訪れて化粧品、薬、あるいは寝具等の購入を勧めに来て、これを購入するケースが典型的です。このような訪問販売においては、消費者側としては、特にその商品を購入する予定はなかったとしても、突然訪問され商品説明されると、何となくその商品がよく見え、他の商品との比較検討も十分に出来ないまま安易に購入してしまい、後で後悔することがあります。このような場合、法(特定商取引に関する法律)はクーリングオフの制度を認め、契約内容を明らかにする書面を受領した日から8日以内に契約を解消(申込の撤回または契約の解除)をすることができるとしており、契約日を含め8日以内(初日算入)に契約を解消する旨の通知書を発送すればよいとされています。

2 さて、上記のように訪問販売は、商品の販売が典型例ですが、それ以外に、業者が顧客の自宅を訪問してサービスを提供する契約を締結する場合もあります。例えば、自宅の屋根の修理工事であったり、マンションのタイルの補修工事などの契約です。これらは、商品の販売というよりは、屋根やタイルの補修という工事を行うものであり、契約の類型としては、「売買」ではなく、「請負」とされています。「請負」とは仕事の完成を約束してその仕事の完成をするための作業をしてもらう契約です。

このような「請負」も業者が顧客の自宅に訪問して、工事をすることを勧められ、契約を締結した場合には、法律上訪問販売として処理されます。

3 このような請負契約が消費者の自宅に訪問する形で締結されたとき、先ほど述べたように8日以内であれば、クーリングオフの制度により契約を解消できることは言うまでもありません。問題は、このクーリングオフの期間を経過した後になお、契約を解消することができるかどうかです。このような工事の請負契約は、金額が数百万円にのぼることも多いのですが、工事内容が必ずしも十分ではなく、消費者にとっては解消したいと思う場合も往々にしてあるのですが、クーリングオフの期間を経過している場合の解消の仕方が問題となります。

 上記のような請負契約においては、民法上(641条)、注文者(消費者)は、工事の完成に至るまでいつでも契約を解除することができるとされておりますので、通常はこの民法の規定に従って契約を解消することが可能です。

4 ところで、工事請負契約においては、契約直後に工事着手金として全体金額の2割程度のお金を支払うことが多く、契約書の中で、契約を解除した場合には、違約金として工事の進行度に応じて代金の何割かの金額を払う外、業者の方に発生した損害についても賠償しなければならないと定められている場合も多くあります。このような契約書をそのまま受け止め、業者から請求されるままに、違約金として代金の何割かを払った上、さらにその時点までの工事に要した費用(人件費、材料費、交通費等)を請求され、これをそのまま支払ってしまうことも多くあります。

5 しかしながら、これらを規制する「特定商取引に関する法律」によれば、契約は業者の工事開始後に解除されたときは、違約金の定めがあるときにおいても、「提供された役務の対価に相当する額」と遅延損害金を支払えば足りるとされています(10条1項3号、5条1項1号)

従って、たとえ契約書に、違約金の定めと共に、損害賠償にも応じなければならないとの定めがあったとしても、消費者の方は提供された工事の対価相当額を支払えば足りるものです。

このような場合には、工事の出来高を査定する会社がありますので、査定を受ける等して工事の出来高を厳密に査定してもらい、仮にそれを上回る工事着手金を支払っている場合には、その差額分の返還を受ける必要があります。業者がこの返還に応じない場合には、監督官庁(消費者庁)に届ける方法なども検討し、法律に従った処理を求めていく必要があります。

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