遺産分割協議成立後の遺言発見

(質問)

 先般、父が亡くなり、母は既に死亡していたことから、相続人である私と兄とで遺産分割協議を成立させ、3000万円相当の不動産を兄が取得し、預貯金1000万円を私が相続することになりました。ところが、その後に、父の遺品を整理していると、父の遺言書が発見され、それによれば、私が遺言執行者に指定され、全ての相続財産を売却してその売却代金の4分の3を私に、4分の1を兄に相続させると記載されていました。私としては遺言に従った方が有利なのですが、この場合どのように処理されるのでしょうか。

(回答)

1 遺言者に遺言がある場合には、遺言が優先します。つまり、遺言者は、生前自分の財産を自由に処分する権限を有しておりますので、その延長として、自分が亡くなった場合の財産の処理の仕方も自由に決めておくことができます。いわゆる遺言自由の原則といわれるものです。従って、相続人の方が遺言の存在や内容を知らないで、遺産分割協議をした場合には、その遺産分割協議は効力がなく、無効ということになります。

2 しかしながら、相続財産を実際受け取るのは、相続人でありますから、相続人の意向を反映して遺産分割協議をすることを全く否定するのもまた行き過ぎです。そこで、相続人の方が遺言の存在やその内容を知りながら敢えて遺言と異なる内容の遺産分割協議を成立させることは、それを遺言者が禁止していない限り、有効とされています。

従って、本件においては、遺言発見後、再度相続人の協議によって遺言と異なる内容の遺産分割協議を成立させれば、それは有効となります。本件においては、相続人間で再度協議して処理することも可能です。

3 ただ、本件においては、遺言に従った方が有利なケースですので、遺言書の効力を活かした方がよいと言えましょう。本件の遺言がお父様の自筆証書遺言である場合には、裁判所で検認手続を経てその内容を保存しておく必要があり、その後は相談者の方が遺言執行者として相続財産の売却をして遺言に従った金銭の配分をすれば足ります。

4 なお、このような遺言執行が面倒な場合には、遺産分割協議の内容を自己に有利な形になるように話し合いをして、再度遺産分割協議を成立させる方法もありましょう。

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