【寄与分】私は長年にわたって、父の介護をしてきました。このことは遺産分割上考慮されないのでしょうか?(動画有)

ご質問

私は長年にわたって、父の介護をしてきました。このことは遺産分割上考慮されないのでしょうか?

解説

こんにちは。福間法律事務所の所長をしております、弁護士の福間則博です。
今日は次のような質問を頂戴しました。
「私は長年にわたって父の介護をしてきました。このことは遺産分割上、考慮されないのでしょうか」ということでございます。

高齢化社会を迎え、ご両親の介護、これを介護施設とか任せるだけじゃなくて、ご自身たちがやはり介護する。こういうケースが非常に多くなってきており、それは遺産分割の中でどのように考慮するか。これは非常に大きな問題になってきております。このことについて説明させていただきたいと思います。

話がちょっと抽象的になるといけませんので、ちょっと具体例を設けさせていただきました。

今日は寄与分について説明させていただこうと思うんですけれども、お父さまがお亡くなりになった。そのときの相続財産が不動産とか預貯金、いくらかある。全体の相続財産、一応7,000万円と評価できるというふうにしておきます。そして、お母さまは既にもうお亡くなりになっているといたしまして、相続人はA、B、2人の子というふうに考えさせていただきます。そして、Bのかたが介護をしてきたというケースを考えてみたいと思います。

介護ということをどのように法律的に評価するかということなんですが、これは子という立場であれば、父親に対するある種の扶養というものをする義務があるわけでございますが、しかし、その中でも特に、特別にやはり扶養、面倒を見、介護をし、お世話をし、金銭的あるいは労力的な負担をしてきたというケースがある場合におきましては、そのことによってその相続財産に対してどのような影響、あるいは結果がもたらされるのかっていうのを考えていく必要がございます。

つまりそのBのかたの介護がなければ、今、残っている不動産、あるいは預貯金の財産がありますけれども、このうち、預貯金の中から介護施設への費用を払わないといけない。あるいは専門のかたに来ていただいた場合には介護ヘルパーのやっぱり費用も発生するということで、Bのかたがそういう労力を提供したことによって施設利用料、あるいはヘルパーさんの費用というものが減少しないで済んだというふうに考えるわけですね。

そうすると、今あるこの財産のうち、Bのかたによる介護。今回、この介護という形で考えさせていただきますけれども、介護によって財産が減らなかった部分がある。減らなかったのは、まさにBのかたの特別のそういう介護によるものであるというふうに考えていくわけですね。

そこで、その介護なさったかたの介護の内容。日数、期間、具体的な行為、そういったものを金銭的に換算する。あるいは実際に出費した介護費用というものを算定する。そういった算定を通じて、この費用の額、あるいは割合といったものを具体的に決めてやるということですね。

それが寄与分ということでございまして、その寄与分をつなげましたら、その寄与による財産の維持、増加というのをこちらのほうに書いていきます。結論として、寄与者のかたに取得してもらうということです。
その具体的なやり方は、じゃ、どういうふうにするのかということなんですが、まずこの全体の相続財産、不動産、預貯金等あるわけですが、7,000万円と評価できる。このうち、寄与。要するに介護をすることによって支出を免れたお金、それが1,000万円程度と評価できるとした場合には、1,000万円維持できた。ここに残っているのは、Bのかたの貢献、寄与によるものだっていうふうに見るわけですね。

そこで寄与に相当する部分を相続財産からまず引いてやる。全体の7,000万円から寄与に相当する1,000万円を引いてやると6,000万円ですね。6,000万円が今回の一応の遺産分割、AさんとBさんとで分ける対象であるというふうに考えまして、このAさんとBさんが子2人ということであれば、相続分はそれぞれ2分の1ということになりますので、この6,000万円に法定相続分の2分の1をまず掛けてあげる。そうすると、3,000万ということになりまして、Aさんにおかれては、この寄与分を控除した後の2分の1、3,000万円を取得していただく。そして、Bさんについては、この6,000万円×2分の1、これは3,000万円ですけれども、これに1,000万円ですね。寄与分っていうものを上乗せしてあげる。で、4,000万ってことになるわけですね。合計は7,000万円という形になります。

寄与分といいますのは、このように寄与したかたの寄与の内容というものを金銭的に評価して、それを相続財産から控除する。そして、それぞれの相続人の取得額を決めた上で、寄与分相当額を寄与者に取得していただく。こういう制度です。

ですから、介護等によって相続財産の維持に貢献してきたという場合には、この寄与分制度を利用して、ぜひともそのかたの貢献っていうものを評価した上で、それ相応の適切な財産を取得していただきたいと思います。

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