fukuma blog

プロフェッションについて

2015/03/17(火) 日々の出来事

先般、ある会合で「プロフェッション」というテーマでお話しをする機会があり、30分ほどお話しをさせて頂きました。さすがに何も文献を見ないで、私の勝手な意見を言うわけにもいかないので、若干の文献を調査してみました。すると、日本で出版されているプロフェッション専門書はあまりなく、最も詳しかったのが、昭和44年発刊の石村善助著「現代のプロフェッション」でありました。現在、古本市場にもなく、いくつかの大学図書館にあることが分かり、早速、大学の先生にお願いして本を読むことが出来ました。これに対して、外国の本となると、特にアメリカでは、プロフェッション研究が盛んなようであり、これに関する本が多数見つかりました。もちろん全部見るわけにはいかないので、その中から選んで参考にしたのが、Roscoe Pound(ロスコー・パウンド) の「The Lawyer from Antiquity to Modern Times」(古代から現代の法律家)でした。この本は、先に掲げた石村先生の「現代のプロフェッション」にも引用してある有名な本でありますが、著者は、ハーバード大学の法哲学の教授であった方であり、発行年も1953年ですから、かなり古い本です。この本も日本の古本市場になく、大学図書館にあることが分かったので、早速、石村先生の本と同時にお願いしてお借りすることが出来たのですが、ひょっとしたら、アメリカのアマゾンに古本が出展されているかも知れないと思い、探してみると、何と数冊売りに出されておりました。海外に発注するのは、やや躊躇したのですが、数千円でしたので、思い切って発注すると、船便で1ヶ月以上かかるとされていたのですが、1週間ほどで手に入り、驚くとともに、古い本なのですが、書き込みはなく、とてもきれいでかつ、著者の写真まで着いている大変重厚な本であり、大満足でありました。

さて、このロスコー・パウンド氏の古本を探している時、ちょっと面白いことがありました。アメリカの古本市場に出されている古本のいくつかは、書き込み状態などが写真で表示してあったりして、そんな書き込みのある本は避けようと思ったりするのですが、今回、見ていると、ある古本には、パウンド氏の次の文章にアンダーラインが引かれてあるのが目に付きました。どんな文章にアンダーラインが施されていたかと言えば、次の文章でした。

The term(profession) refers to a group of men pursuing a learned art as a common calling in the spirit of a public service ---no less a public service because it may be a incidentally be a means of livelihood.

(プロフェッションという言葉は、公共に対する奉仕の精神をもって、学問的な技術を通常の仕事として追究する人たちを意味する。生活の手段となることは、単に付随的なことにすぎないことから、それは、公共サービスと変わらないものである。)(福間訳)

この文章は、実は、東大の民事訴訟の先生であった三ヶ月章教授が定年直前に書かれた「法学入門」(昭和57年)において、ロスコー・パウンド氏のプロフェッション観を紹介した箇所にそのまま引用されている文章でありました。

私は、このアンダーラインの施された古書の写真を見た時、それを施したアメリカの学生、あるいは法律家の方と感動を共有したかのような感じになりました。おそらくそれは私の勝手な思い込みでしょうが、自分が感動した文章に同じように感動した人がいると思うと、感動も2倍になったような気がしたのでした。

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