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(ラジオ放送)「遺産分割(特別受益)」

2014/03/21(金) ラジオ放送

(参考事例)

父が亡くなりました。母はすでに亡くなっていますので、相続人は兄と私の2人なのですが、生前父は、兄にだけ住宅購入資金として金1000万円を贈与していました。遺産分割上、このことを考慮されないのは不平等だと思うのですが、どう処理されるのでしょうか。現在の遺産総額は、不動産と預貯金合計金5000万円です。

(説明)

1 本日は、遺産分割における特別受益についてお話ししたいと思います。これは被相続人が生前に、一部の相続人にまとまった財産を贈与していたような場合に相続人間の公平を図るものです。

2 遺産分割の対象となるのは、原則として被相続人がお亡くなりになったときに存在した財産ですので、本件においては、現にある不動産及び預貯金の合計金5000万円の財産ということになります。

3 しかしながら、被相続人が生前に一部の相続人に対し多額の財産を贈与していたような場合には、その贈与によって相続財産が減少し、贈与を受けなかった他の相続人がわずかの財産しか取得できないとすれば、相続人間に著しい不公平が生じることになります。そこで、民法は、このような不公平を是正するために、特別受益の持ち戻しという処理をしております。これがどのような制度かと言いますと、まとまった贈与がなければ、その贈与相額が相続財産として残っていたはずであることから、この贈与相当額を相続財産に持ち戻して評価し、あたかもその贈与がなかったとして相続財産の総額を決めるものです。これがいわゆる「みなし相続財産」と言われるものです。本件においては、相続開始時の財産が5000万円で、贈与額が1000万円ですから、この1000万円を相続財産に持ち戻し、みなし相続財産を金6000万円として計算します。

4 本件での相続人は子2人で、各相続分は2分の1となりますから、上記みなし相続財産6000万円の2分の1である金3000万円が生前贈与を受けていなかった方の具体的な相続分となり、すでに生前贈与を受けていた相続人(兄)については、その金3000万円からすでに贈与を受けていた金1000万円を控除した金2000万円が具体的な相続分となります。つまり、遺産分割においては、生前贈与を受けていた兄は、2000万円、その贈与を受けていなかった相談者は、3000万円となるものです。

5 このように生前贈与がある場合には相続人間の不公平を是正するために特別受益の持ち戻しを評価する必要がありますので、相続の場合には、これらの贈与の有無・額について十分調査検討していくことが必要です。

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