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(ラジオ放送)「養育費(夫以外の男性との間の子の養育費)」
(質問)
夫以外の男性との間の子が法律上夫の子として扱われた後、夫婦が離婚した場合、元夫に対し、子の養育費を請求することができるか。
(Aさんは、Bとの婚姻中、Cとの間の子を出産しながら、Bにはこのことを秘していたため、Bとしては父子関係を否定する機会を逃し、法律上Bが父と扱われていた後に、AとBが離婚した。このような場合、AはBに対し、子の養育費を請求できるか。)
(回答)
1 婚姻関係にある男女の間に生まれた子は、「嫡出子」(ちゃくしゅつし)といい、婚姻成立の日から200日を経過した後に生まれた子は婚姻中に懐胎したものと推定され(民法772条)、夫がその子との間の父子関係を争うためには、「嫡出否認の訴え」を提起しなければなりませんが、この訴えは夫が子の出生を知ったときから1年以内に提起しなければなりません(民法777条)。従って、たとえ他の男性との間の子であっても、夫が子の出生を知ってから1年以内に訴えを提起しなければ、その子は戸籍上の父の子として扱われ、もはやこれを争うことはできなくなります。従って、本問においては、子の父はBであって、Cではありません。その結果、子の養育費はBが負担することになります。これは一面において自然的血縁関係による真実の父子関係を確定する方法を制限するものですが、反面において、父の確定によって子の福祉を図ろうとするものです。
2 では、その後AとBが離婚した場合にはどうなるでしょうか。この場合にも、Bが子の父であるという法律上の地位は何ら変わりませんから、依然としてBは子の養育費を負担する必要があります。
3 しかしながら、例えば、具体的事案において①Bが嫡出否認の訴えを提起しなかったのは、妻Aが他人の子であることを知りながら一切これをBに告げず、Bとしては他人の子であることを知り得る余地がなく、嫡出否認の訴えを提起する機会を失ったこと、②Bが婚姻中は自分の子と信じて相当高額な生活費を渡し、子の養育に十分な費用を負担していたこと、③離婚後の子の監護費用を元妻Aにおいて負担することができない事情がないこと等の事情がある場合には、Bに子の養育費を負担させるのは酷とも言えそうです。近時、最高裁は、このような事情がある場合には、Aの養育費請求は子の福祉に十分配慮するにしても、なお「権利の濫用」に当たるとして養育費の請求を排斥しました(最高裁平成23年3月18日判決)。
4 裁判所が法律の形式的な適用による不都合を回避するために、権利の濫用は認めないという形で具体的に妥当な結論を導いた例です。
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