fukuma blog

映画「風立ちぬ」と小説「魔の山」

2013/09/10(火) 日々の出来事本の感想

先日、宮崎駿監督の「風立ちぬ」という映画を見てきたのですが、喫煙シーンが多いということで批判も多いようです。この映画のワンシーンで、高原ホテルに滞在している主人公が、そこで会うドイツ人とトーマスマンの「魔の山」の話をするのですが、その「魔の山」における主人公ハンスカストルプは、葉巻の愛好家であり、マリアマンツィーニという葉巻を実においしそうに吸うので、この小説を読むと確かに葉巻を吸ってみたくなる感じでありました(私は喫煙の習慣を有しておりませんが)。このほか、両作品は、高地の豪華なホテル、結核療養所という設定も似ておりました。この「魔の山」という小説は私の好きな小説の一つでもあります。

森羅万象を文章にしてしまうトーマスマンの筆力には圧倒されるばかりでしたが、若き主人公ハンスカストルプが、理性信仰の人文主義者セテムブリーニと、理性だけでは収まりきらないものから思考する宗教家ナフタの間で成長する過程は、教養小説と言うにはあまりにも本格的な小説であったようにも思います。

トーマスマンは、若い頃「ブッデンブローグ家の人々」を書き、この小説でノーベル賞をもらっていますが、個人的には、「魔の山」の方に惹かれます(どちらもすばらしい小説なのですが)。

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