1.交通事故に遭われた方々へ

交通事故

交通事故は、私たちの生活を一変させてしまいます。負傷して入院すれば、仕事はできなくなり、退院しても以前と同じ仕事につけるとは限らず、経済的な損失と精神的な打撃は多大なものです。

交通事故の法的処理は、事故のもたらしたこれらの不利益を金銭的に評価し、その回復をはかろうとするものですが、最終的な支払を受けるためには、後遺障害の等級認定、過失割合など法律的な問題点を検討する必要があります。

また、損害の算定については、自賠責保険、任意保険、裁判実務の各基準が相違しており、納得のいく解決をするためには、どのような手続きが適切かを十分に検討しなければなりません。

私たちは、交通事故に遭われた方々が公平かつ適正な賠償を受けることができるように支援し、事故のダメージを乗り越えて明るい生活に歩み出して頂けるよう努めたいと考えております。

 

2.法的解決のためのポイント

交通事故を法的に解決する場合に重要となるポイントは、次の5つです。

1.損害の範囲
2.症状固定
3.等級認定
4.3つの賠償基準の相違
5.過失相殺

具体的には、次の1~5のとおりです。

1.賠償される損害の範囲

賠償される損害は、原則として、当該事故により通常発生する次のような損害です。

○人的損害

●財産的損害
・積極損害(事故により支出を余儀なくされた費用に関する損害)
治療関係費、付添看護費、入院雑費、通院交通費、器具購入費、葬儀関係費、損害賠償請求関係費用、弁護士費用、遅延損害金など

・消極損害(事故がなければ得られたであろう利益に関する損害)
休業損害、後遺障害による逸失利益、死亡による逸失利益

●精神的損害

入通院に伴う慰謝料、後遺障害に伴う慰謝料、死亡に伴う慰謝料


○物的損害

修理費用、買替費用、評価損、代車使用料、休車損害

積極損害(事故によって支出を要した費用)については、領収書などの証拠を残しておく必要があります。なお、後遺障害についての損害(逸失利益・慰謝料)は、争点になりやすく、以下で述べるとおり、症状固定と等級認定という手順が必要になります。

2.症状固定

受傷部分については、病院で治療を受け、完全に事故前の状態に回復してもらうのが理想ですが、現代の医学によっても完全に身体機能を回復させることができない場合もあります。例えば、股関節の傷害について治療を継続してきたけれども、関節の機能障害がどうしても完治せず、歩行困難という症状が残るようなケースです。このように「現代の医療水準に従って治療をしてもこれ以上は改善しないという状態」になることを「症状固定」といい、そのときに残った障害を「後遺障害」といいます。

症状固定がなされると、症状固定前の治療費については、加害者に請求することができますが、症状固定後の治療費については、原則として加害者に請求することはできません。症状固定後は不必要な診療と考えられるからです。また、症状固定前の収入減については、休業損害として処理されますが、症状固定後の収入減については、治療によっても元の状態にも戻らない以上、その状態によってどの程度労働能力が低下し、どのくらい収入減となるのかを判定しなければなりません。それが次に述べる等級認定です。


このように症状固定がなされると、その前後で治療費および事故による収入減についての法的処理が異なってきますので注意が必要です。また、症状固定の時期については、被害者と加害者(保険会社)との間でトラブルになることも少なくないので、主治医とよく話をして症状固定時期を判断してもらうことが必要です。

3.等級認定

症状固定がなされると、医学的には、その時期以降は治療を継続しても症状は改善されないと考えられる状態になります。そこで、法律的に、そのように完治しない症状(後遺障害)によって将来どの程度の収入減がもたらされるのかを判定する必要があります。その手続きが等級認定です。

等級認定とは、症状固定時の完治しない様々な症状(後遺障害)を労災に準じて1級(労働能力喪失率100%)から14級(労働能力喪失率5%)まで細かく分類し、問題となっている症状(後遺障害)が何級でありかを判断し、その級によって想定される労働能力喪失率によって将来の収入減を算定しようとするものです。そして、認定された等級は、逸失利益の算定だけでなく、慰謝料の金額や、自賠責保険における後遺障害による損害の賠償限度額といったものにも影響を与えます。従って、等級認定は、交通事故に基づく損害賠償においてきわめて重要な問題と言えます。

後遺障害の等級を認定するのは、加害者の自賠責保険会社です。自賠責保険会社は、損害保険料率算出機構の調査事務所に対して後遺障害の等級認定の調査を依頼し、調査事務所の調査結果に基づいて等級認定をします。

なお、訴訟になった場合、裁判所が自賠責保険会社による等級認定に拘束されることはなく、自賠責保険では非該当とされたものの後遺障害が認められた事例、自賠責保険における等級の認定よりも上位等級が認定された事例、後遺障害等級との関係で自賠責保険の労働能力喪失率表よりも高い労働能力喪失率が認められた事例もあります。

ところで、主な自賠責保険金の請求および等級認定の手続きは、次の二つです。

(1)
被害者請求
被害者が直接に自賠責保険会社に対して請求し、認定等級は、被害者に通知されます。なお、傷害による損害の場合、事故発生日の翌日から3年以内、後遺障害による損害の場合、症状固定日の翌日から3年以内に請求する必要があります。
(2)
任意一括(一括払制度)
任意保険会社が被害者に対して自賠責保険金と任意保険金の合計額を支払った後に、任意保険会社が自賠責保険会社に対して自賠責保険金を請求する方法です。任意保険会社が、調査事務所に対して事前に後遺障害の等級認定手続を依頼し、調査事務所からの「事前認定票」により後遺障害の認定等級の通知を受けます(これを「事前認定」といいます)。被害者に対する直接の通知はないため、被害者は、任意保険会社に事前認定結果を問い合わせて、事前認定票を開示してもらう必要があります。

 

●異議申立て
被害者は、等級認定について不服がある場合には、「異議申立て」ができます。異議申立ては書面で行う必要があり、被害者から異議申立てがなされると、自賠責保険審査会で審査がなされます。

被害者請求の場合には、被害者は、自賠責保険会社に対して異議申立てを行います。任意一括の場合には、被害者は、任意保険会社に対して異議申立てを行い、任意保険会社が損害保険料率算出機構に対して事前認定に対する再認定の申請をすることになります。

再認定の申請をするか否かの決定は任意保険会社が行うため、任意保険会社が再認定の申請が必要であると考えない場合には、被害者が異議申立てを行っても、再認定の申請がなされないこともあり得ます。この場合、被害者は、症状固定日の翌日から3年以内であれば、事前認定後に被害者請求に切り替えて被害者請求を行って、異議を申し立てることが有効です。

4.3つの賠償基準の相違

損害賠償額の基準には、

1
自賠責基準
2
任意保険基準
3
裁判実務

の3つがあります。一般に、後者になるほど損害賠償額が高くなります。

(1)自賠責保険は、交通事故の被害者が最低限の賠償を受けることができるように加入が法律で義務づけられている保険です。自賠責保険においては、傷害による損害・後遺障害による損害・死亡による損害についてそれぞれ賠償の限度額があり、また、物損事故は対象となっていません。

(2)任意保険は、自賠責保険では足りない部分を上乗せで賠償するものであり、契約者が任意で契約している保険です。任意保険の基準は、裁判実務よりも低く、傷害の程度が重くなればなるほど、裁判実務との差は大きくなります。任意保険会社から賠償額の提示がなされた場合には、裁判実務との差がどの程度が検討しておく必要があります。

(3)裁判実務は、一般に、任意保険基準よりも賠償額が高いとされています。裁判をする場合には、弁護士費用と損害金(年5%)を加えて請求しますが、裁判実務の基準は、任意保険の基準より高いため、弁護士費用と損害金(5%)を免除して和解する場合でも任意保険会社の当初提示額から2400万円以上の増額で和解したような場合もあります。


5.過失相殺

過失相殺とは、損害額の算定にあたって、損害の発生・拡大について「被害者の過失」がある場合、公平の見地からこれを考慮して、その金額を減少させることをいいます。交通事故による紛争において、最も多い争点の1つがこの過失相殺です。

過失相殺において最も重要なのは、事故態様を明らかにすることです。その資料としては、冒頭に述べた警察で作成される実況見分調書などの刑事記録、任意保険会社の依頼に基づき調査会社が作成する事故調査報告書などがあります。現在、過失相殺については、事故態様を類型別に整理し、加害者と被害者の諸事情を細かく考慮する手法がとられており、交通事故に関する本などでも広く紹介されています。具体的事案における過失割合を判定し、請求できる損害額をしっかりと算定する必要があります。

 

3.法的処理の流れ

交通事故の手続きの流れは、次の通りです。

 

 

4.弁護士費用(いずれも消費税別途)

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