父が亡くなりました。父の生前中、兄が父の面倒を見てくれることを約束したので、私はそれを信じ兄の求めに応じて、相続を放棄し、遺留分減殺請求もしないという誓約書を書いてしまいました。しかし、実際には兄は父の面倒を一切見ておらず、私が父の世話をしてきました。私は父の遺産を相続できないのでしょうか?

質問

父が亡くなりました。父の生前中、兄が父の面倒を見てくれることを約束したので、私はそれを信じ兄の求めに応じて、相続を放棄し、遺留分減殺請求もしないという誓約書を書いてしまいました。しかし、実際には兄は父の面倒を一切見ておらず、私が父の世話をしてきました。私は父の遺産を相続できないのでしょうか?

 

解説

本件においては相続開始前になされた相続放棄や遺留分減殺請求権の放棄が法律上有効か否かが問題となります。
  
まず、相続放棄については、民法が相続開始後に、相続を承認するかあるいは放棄するかを相続人に選択させる制度を採用していることから、相続開始前の相続放棄はできないとされています。従って、相続開始前に、相続放棄をする書面を作成していたとしてもその法的効力は認められず、無効という外ありません。
 
次に、相続開始前になされる遺留分減殺請求権の放棄については、民法は家庭裁判所の許可を受けたときに限りその効力を生ずるとしています(民法1043条1項)。家庭裁判所は、①遺留分権利者の自由意思に基づくものであること、②放棄の理由が合理的であること、③放棄と引き換えに何らかの代償があること等に照らしその放棄の許可を検討することとなります。
 
相続開始前に相続放棄や遺留分減殺請求権の放棄の書面を作成された場合でも、断じてあきらめる必要はなく、弁護士にご相談頂きたいと思います。

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