父が死んでから1年が経ちますが、今になって父の借金が見つかりました。今更、相続放棄はできないのでしょうか?

質問

父が死んでから1年が経ちますが、今になって父の借金が見つかりました。今更、相続放棄はできないのでしょうか?

 

解説

相続放棄は、相続人が「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月以内にしなければならず(民法915条1項)、これは被相続人が死亡して自己が相続人になったことを知った時から3か月以内であることを意味します。 
 
この時から3か月以内に相続放棄をしないと相続人は単純承認したものとみなされ、借金等の債務も全て相続分に応じて承継することになります。
 
しかしながら、相続人が被相続人に多額の債務があることを全く知らず、相続放棄を検討する余地がなかったような場合にまで相続放棄ができないとするのも不合理です。 
 
そこで、最近の裁判例においては、「相続人において被相続人に積極財産があると認識していてもその財産的価値がほとんどなく、一方消極財産(債務)について全く存在しないと信じ、かつそのように信ずるについて相当な理由がある場合には、相続人が消極財産の全部又は一部を認識した時又はこれを認識することができた時から、3か月の期間を進行させるのが相当である」と判断しているものもあります(東京高裁平成19年8月10日判決)。
 
このような裁判例に従えば、本件においても父の債務について全く存在しないと信じかつそのように信ずるのがもっともだといえるような事情が認められれば、相続放棄ができる余地があります。
熟慮期間の3か月を経過した場合でも直ちにあきらめずに、弁護士に相談されることをお勧めします。

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